実はじゃがいもって、とても簡単に栽培ができる作物なんです。
植え付け前の準備だけキチッとしておけば、仕事は8割以上成功したようなものです。
今回は、ただ今じゃがいもを栽培中のプロがその育て方を伝授します。
経験者さえも、「え?」と驚くような裏ワザも…。
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じゃがいもの栽培時期
じゃがいもの栽培時期について解説します。
じゃがいもが生育できる気温は5~28℃です。
30℃以上になると生育を停止しますが、かなり幅の広い生育温度帯ですので、春植えと秋植えが可能です。
- 春植えは、3月中旬に植え付け~7月下旬に収穫。
- 秋植えは、8月下旬に植え付け~12月上旬に収穫となります。
※地域差や標高、平均気温などにより多少時期はことなります。
ただし東北・北陸地方より北の地域など寒冷地での秋植えは、気候が合いませんので、じゃがいも栽培は春植えのみとしてください。
また失敗のリスクがより少ないのは春植えで、秋植えは地域や気候によっては収穫期を迎える前に生育温度を下回ってしまい、収穫の数や量が極端に落ちることがあります。
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じゃがいも栽培で必要なモノ
種苗店やホームセンターですべて揃えることができます。
種イモ
種イモはお近くの種苗店や、ホームセンターで扱っているものを購入してください。
形が整っており卵型をしている種イモを選びましょう。
わずかに芽が出ていても結構ですが、種イモから1cm以上伸びているものや、表面が緑化しているような種イモは使えません。
表皮がなめらかでハリ・ツヤがあればなお良いですね。
スーパーマーケットで食用として売られているものでも栽培はできますが、流通や保管の影響で、種イモとして適さない状態(成長するホルモンが失われる病気など※)に陥っていることがあります。
失敗の元ですので、種専用のイモを求めてください。
採種体系まで厳格に定められて、防疫検査が義務付けられているため、種イモは国や県から委託された農家が厳しい眼で増殖しています。
肥料
化成肥料を使います。
成分割合は5-7-7など、窒素をやや抑え目にしたものが、じゃがいも栽培には適しています。
元肥、追肥で同じ肥料を使用して結構です。
近年は「イモ類栽培専用の肥料」も販売されていますので、そちらをお使いになってもOKです。
肥料のパッケージなどにある3つの数字の表記は、この三要素の含む量と割合をしめしています。
例えば、5-6-7の化成肥料100gには、「窒素5g-リン酸6g-カリウム7g」を含む と読み取ります。
その他に必要なモノ
プランター栽培と畑栽培の場合で、道具が少し変わります。
プランターで栽培する場合
- プランター
- 鉢底石
- ジョウロ
プランター
横幅60cm以上のもので、種イモ2個を植え付けることができます。深さは40cm以上のものを使用してください。
鉢底石
プランターに水が溜まりにくくするため、プランターの底に敷き詰める石です。種苗店やホームセンターで購入できます。
ジョウロ
水やりに使用します。
畑で栽培する場合
- スコップ
- つるはし
- ジョウロ
スコップ
じゃがいもの栽培では「土寄せ」という作業を行います。
土から飛び出したイモに土をかぶせる作業です。スコップの代わりとして、鋤(すき)、または手鍬(てぐわ:小型の鍬で狭い場所や細かな土寄せが簡単に行えます)でも結構ですので、栽培面積や種イモの植え付け数によって使い分けてください。
つるはし
収穫時には、株の周囲をゴソっと掘り起こしたいので、つるはしがあるとよいでしょう。スコップでも代用できますが、規模が大きい場合はつるはしの方が楽です。
ジョウロ
水やりに使用します。
プランターでのじゃがいもの育て方
土づくり
市販の培養土を種苗店やホームセンターでお求めください。
培養土を使用するなら、元肥(もとひ:作物の植え付け前に土に仕込んでおく肥料のこと)は既に配合されているので不要です。
種イモの芽だし
催芽(さいが)
植え付けの10日程度前には、種イモの芽だしを行います。
種イモを弱い日光があたる場所においておくと、へこんだ部分から芽が伸びてきます。これを催芽(さいが)と呼びます。
暗い場所で催芽を行うと、ヒョロヒョロの芽が伸びて折れたり傷んだりしますので注意してください。
「ストロン」と種イモの切り方
ストロン側(種イモのヘソとも言います)を1cm程度切り落として縦切りにします。
1片が40~50gを目途にカットしてください。
このとき必ず縦切りであることを確認しながら切ることが大事です。
維束管という養分の通り道である器官が縦方向に走っていますので、横に切ると発芽や成長に必要な養分が十分に供給できなくなります。
また、芽の数がおおよそ同じになるような位置を選んで、カットしてください。
(例えば10本の芽が出そうなら、5本と5本もしくは4本と6本に分割できるような位置に包丁をいれます。)
切り口には、草木を燃やしたときにできる草木灰を付着させて消毒を行うのがベストですが、入手が困難な場合は、日当たりのよい場所で朝から晩まで切り口を太陽に向けておいてください。
こうすると日光の紫外線で悪い菌を焼き払うことができます。
プランター・鉢底石
プランターの深さは40cm以上必要です。
成長が旺盛なじゃがいもは、栽培中に土から顔を出すほど成長するものがあります。
このイモが日光に当たり続けると緑化して、有毒なイモに育ってしまいます。
(緑化したじゃがいもは食べてはいけません)
陽をさえぎるために、土寄せ(プランター栽培の場合は「増し土」と呼びます)を行いますので、プランターには高さが必要となります。
横幅は60cm以上あると良いでしょう。
始めにプランターの底に鉢底石を敷きます。量はプランターの底が見えない程度で結構です。
鉢底石を敷き終えたら、プランターの上端から15cm下の位置まで用土を詰めます。
種イモの植え付けは裏ワザで行う
種イモの植え付け間隔は30cm前後が適当です。
用土に深さ10cmの穴を作り、「芽を下に、切り口を上に向けて」土を戻します。
栽培を紹介するサイトや教本とは「逆」の植え付け方ですが、ここが裏ワザ。
切り口を上に向けて植え付けると、茎はイモの下から伸びてきますが、このとき弱い茎は途中で伸長を止め、強い茎だけが選ばれて地上部に伸びてきます。
病害虫に強く、健康な茎葉が育つため、光合成も盛んになって、結果的に収穫するじゃがいもは良質の炭水化物で満たされるという寸法です。
この裏ワザ方法でも3本以上の芽が地上に出てくると、芽かきという作業を行う必要があります。
必要な作業ではありますが、かきとった部分は病気の侵入口になるので、できればやりたくない作業です。
病気のリスクを少しでも抑えたいなら、裏ワザを試してみてください。
プランターの置き場所
日当たりが良いほど上質なじゃがいもが収穫できますので、可能な限りよく日の当たる場所を選んでください。
鉢底石などで排水性が保たれていれば雨が降っても問題ありませんので、わざわざひさしの下などに置く必要もありません。
水やり
種イモの植え付け時には、プランターの底から水がしみ出るまでタップリと水を与えます。
発芽までは土の表面が乾いたタイミングで水やりをしてください。
発芽後は7日間連続して雨が降らなかったときにだけ、水を与えましょう。
じゃがいもは過湿に弱い植物ですので、くれぐれも水のやり過ぎには注意です。
芽かき
裏ワザ方式で種イモを植え付けると、元気な芽しか地上に伸びてきません。
通常2本~3本しか出てこない筈ですが、発芽力が高い種イモの場合なら3本以上の芽が出ることもあります。
この場合は大きく勢いの良い2本を残して、他の芽をかきとってやります。
株元が抜けないように軽く片手で押さえ、もう片手でかきとる芽を掴みます。
真上でなくやや斜め方向に引くと、簡単に取れると思います。
追肥と増し土
作物の成長に併せて、また必要に応じて与える肥料を追肥(ついひ)といいます。
じゃがいもの場合も追肥を与えることで収穫量のアップが狙えます。
1回目は、草丈が地上20cm前後に生育したら与えます。
株の周囲に化成肥料(5-7-7など)を一握りばら撒き、培養土を少しずつ足しながら小型のスコップか手鍬で軽く土と混ぜ合わせて、株元に混ぜ合わせた土を寄せます。
増し土の量は、元の土から4~5cm程度の高さになるくらいが目安です。
2回目の追肥は、1回目の2週間後です。
与える肥料の量は1回目の約半分で結構ですが、寄せる土は同じ量(元の土から4~5cm程度の高さになるくらい)です。
2回目の土寄せの頃には、成長のよいじゃがいもが土の表面に出ているかもしれません。
とても喜ばしい瞬間ですが、このイモに日光があたると緑化してしまいます。
緑化したじゃがいもは苦味成分を生成するだけでなく、天然毒素(ソラニンやチャコニン)を多く含みます。
天然毒素を口にすると、吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがありますので、土寄せをしっかり行い、安心・安全なじゃがいもを栽培してください。
増し土と追肥は同じタイミングに行って問題ありません。
花摘みをする?しない?
じゃがいもに限っては、花摘みはしなくても大丈夫です。
一般的な植物のはたらきでは、花が咲き、実を着けるときに蓄えた養分を使います。
ただし、じゃがいもは例外。
じゃがいもの花は受粉能力がとても低く、通常だと花の後に実を結ぶことはありません。
その代りに地中にイモを多く残すことで、繁殖できる生き方を身に付けています。
よって花摘みの必要はありません。
収穫の適期
裏ワザの2つ目を紹介します。
「草丈の下半分が黄色く枯れると収穫期」とされるのが一般的です。
しかし、なかなか見分けづらいし、掘り起こすのには早すぎです。
病害虫被害がない、食べるまでもう少し辛抱できる、という場合は全体が枯れるまで待ってみてください。
株元をよくみると、株元が少し陥没してきます。
実はこのタイミングが収穫適期。
株元の陥没を確認できたら、少しプランターをゆすって株元から引き抜くか、ビニールシートなどを敷いた広い場所でプランターをひっくり返してもOKです。
畑でのじゃがいもの育て方
土づくり
じゃがいもは土中の水分が多くなるとイモが腐ってしまうので、排水性のある土壌が好ましいです。
植え付けの20日以上前に畑を30cmほど掘り、100~150gの化成肥料(配合割合は5-7-7程度)をムラなく入れます。
土へ空気をすき込むようなイメージで、よく耕しておいてください。
ウネのサイズの目安は、横幅50cm×高さ15cm~20cmです。
ついつい最初から排水性のよい高いウネを立てたくなりますが、植え付け後に土寄せを行い、最終的に高さのあるウネになればよいので、始めはこの程度のウネサイズで大丈夫です。
植え付け
プランター同様、土に深さ10cmの穴を作り、「芽を下に、切り口を上に向けて」土を戻します。
水やり
じゃがいもは土中に水分が残るのを嫌います。
畑栽培の場合なら、目安として10日間以上晴れが続いたら水をやるようにしてください。
心配になるかもしれませんが、雨が降ると水やりは自然に完了していると信じてみてください。
芽かき
プランター栽培に同じです。
土寄せと追肥
プランター栽培では、土をプランターに足しましたが、畑での栽培では土を寄せます。
作業のタイミングは、プランター栽培と同じく、1回目は草丈が地上20cm前後に生育したときに、元の高さから4~5cm程度の高さにまで土寄せと追肥。
2回目は、1回目の2週間後に半量の追肥と、同量の土寄せ。
ただし土寄せと追肥を行うタイミングに前後して、イモが土の上に出てきてしまった場合は、すぐに土寄せを行います。
しっかりと土をかぶせて、イモの緑化を防いでください。
花摘みと収穫
花摘みに関しては、プランター栽培と同じです。
収穫はつるはしで行うのが良いでしょう。
立派なじゃがいもほど、広範囲にイモを着けています。
株元から十分距離を取って、イモに当たらないようじっくり、広く、深く、掘っていきましょう。
用土の袋をそのまま利用して栽培
用土の袋をそのままプランターの代わりとして活用することができます。
栽培方法はプランター栽培と同じですが、
- 種イモを植え付ける前に増し土として使う土を、あらかじめ取っておくこと。
- 底部に水抜き用の穴を20か所以上空けておくこと(ドライバーなどを突き刺すと簡単に空きます)
の2点をお忘れなく。
用土袋の上口を切り取り、約半分の土を別の容器(バケツやビニール袋でOK)に取り分けます。
開いた口を折り返して、袋の上端が土の高さの5~10cmになるよう調整します。
5cm程度折り返しを戻して、増し土を行ってください。
25Lの用土袋で1個の種イモを育てることが可能です。
※じゃがいもの他にも、トマト、キュウリ、ナス、ゴーヤ、ダイコン、ゴボウ、ニンジンなども栽培が可能です。
じゃがいもの病気・害虫対策
じゃがいもの病気
モザイク病
葉に濃い部分と薄い部分(モザイク)が生じて、葉が落ちたり茎がしおれたり、成長が悪くなります。
病気が発生した葉は速やかに取り除いて、ほ場の外で処分してください。
原因はアブラムシが媒介するウイルスです。アブラムシの発生を確認した場合は、アブラムシ専用の殺虫剤で対処してください。
そうか病
イモの表面が、コルクのように劣化し、数十カ所のまだら(病斑)があらわれます。
収穫前の高温や、種イモが病気を持っている場合に発症します。
よい種イモを選ぶことが大切です。また、じゃがいもの花が咲いたころに、株元へ1~2握りの消石灰を与えておくと予防が期待できます。
じゃがいもの害虫
アブラムシ
アブラムシは、じゃがいもに実害を及ぼすことはありませんが、病気を媒介しますので駆除が必要です。
アッという間に大繁殖することがあるので、薬剤の散布をおすすめします。
テントウムシダマシ
こちらも見つけ次第、薬剤の散布が良いでしょう。
ただし、そうか病の予防として消石灰を散布した場合、テントウムシダマシが寄り付きにくくなります。
石灰を嫌うのか、石灰成分が効いて葉が厚くなると虫が喰いつけないのか、科学的な分析はありません。筆者の経験則ながら、消石灰が、そうか病とテントウムシダマシ両方に良い結果をもたらしているのは、ほぼ間違いないようです。
じゃがいもの連作障害
じゃがいもを栽培した土で、続けてじゃがいもを栽培しないようにしましょう。
土の成分にかたよりが生じて、病気にかかりやすい、収量が極端に減る、成長がとても遅いなどの障害がでることがあり、連作障害と呼ばれています。
再びじゃがいもを栽培する場合は、最低2年以上は別の作物を栽培してからにしましょう。
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まとめ
じゃがいもの栽培はとても簡単で、水やりなどの世話も少なくて済みます。
手掘りの収穫はそこそこの重労働ですが、土の中から立派なじゃがいもが次々に出てくるのは楽しいモノです。
心地よい汗をかきながら、お友達や子どもたちとにぎやかにイモ掘りを楽しまれてはいかがでしょうか。
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