かぼちゃの栽培には特別なテクニックは必要ありません。
大切なのは、少しの手間と夏の暑さ、日光です。
夏から秋に旬を迎えるかぼちゃですが、どうすればホクホクのかぼちゃを作れるのか、収穫はどのタイミングなのか、などポイントを押さえながら紹介します。
かぼちゃの栽培時期と特徴
栽培に適した時期
かぼちゃは、おおむね夏から秋に栽培できますが、「昼夜の温度差が大きい時期」に、より栄養価が高く・ホクホクのかぼちゃが収穫できます。
図に平均的な目安を示しますが、九州・沖縄地方では2月中旬種まき-6月下旬収穫。
東北北部・北海道では4月中旬種まき-8月中旬収穫。
本州では6月中旬種まき-10月中旬収穫が適期の目安となります。
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かぼちゃ生育の適温
かぼちゃの生育適温は18~28℃ですが、夏に収穫したかぼちゃは軽くて水っぽく、秋に収穫するかぼちゃはずっしりと重くて甘さが強くなる傾向があります。
理由は、夜間も温度の高い夏期は、日中に葉でつくられた炭水化物を夜にかぼちゃ自身が消化してしまうから。
一方で、秋期になると夜間の気温が下がるので、かぼちゃの夜の炭水化物の消化量が減り、余った分はかぼちゃが実に蓄えます。
かぼちゃ栽培は温暖な時期に「いかに多くの日光量を葉に与えるか」が勝負の分かれ目ですので、お住いの地域の気温や昼夜の温度差を注目して栽培時期を選んでください。
たったこれだけのことで、一味も二味も良くなりますよ。
かぼちゃ栽培に必要な9つのモノ
1つ1つ詳しく解説します。
- 種
- ポリ鉢
- 育苗用培養土
- 完熟堆肥
- 化成肥料
- クワ
- ジョウロ
- 敷きワラ
- 剪定バサミ
1.種
大玉種や中玉種、小玉種、西洋種や日本種など、多くのラインナップがありますが、基本的な栽培方法は大きく異なりません。
お好みの品種を選んでください。
2.ポリ鉢
種をまき、苗を仕立てるための容器です。
サイズは直径10~12cmのもので十分です。
3.育苗用培養土
苗を育てるための専用培養土が販売されています。
失敗が少なく、肥料や栄養剤を既に配合してあるのでお手軽です。
4.完熟堆肥
畑に播いて良い土の状態を維持しながら、土中の微生物の活動を促します。
5.化成肥料
かぼちゃ栽培では基本的に堆肥だけしか使用しませんが、もし栽培中に肥料切れをおこして、成長が大きく落ち込んだ場合には化成肥料を補います。
配合比率は、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)が8-8-8の、バランスの良いものを使用します。
6.クワ
栽培区域を耕すために使用します。
7.ジョウロ
育苗時に水やりをするために使用します。
8.敷きワラ
稲ワラを畑に敷いておくことで、雑草を抑えて土の水分を適当に保つ効果を狙います。
稲作農家さんに分けてもらうか、種苗店でお買い求め下さい。
どうしても入手できない場合は、ビニール製のマルチシートを購入しておくと、ほぼ同等の効果があります。
9.剪定バサミ
不要なツルや花、果実を剪定するときや、収穫時にも使用します。
畑でかぼちゃを栽培する方法
種まきと育苗【4月上旬~下旬】
かぼちゃの栽培方法について、まずは種まきから解説します。
発芽適温は23~28℃です。
地域差はありますが、おおむね4月上旬から下旬の気温がしっかり高まる時期に種まきを行いましょう。
育苗用培養土をポリ鉢に7~8分目程度いれて、3~4粒の種を均等に置き1cm程度の土で覆います。
毎日土を点検して土が湿っている状態を保つ必要がありますので、土の表面が乾燥したらこまめに水を与えてください。
発芽したもので、最も勢いが良く大きなものを残し、他の芽は引き抜きます。
本葉が4~5枚に育つと育苗は完了。畑に植え付けることができます。
畑の準備【3月中旬~4月上旬】
元肥を与える
元肥とは、作物を植え付ける前に土に施しておく肥料のことです。
苗を植え付ける20日以上前には、畑の準備を済ましておきます。
栽培区域に1㎡あたり200~300g完熟堆肥を入れて、よく耕しておきましょう。
ウネの大きさ
ウネの大きさは、最低でも幅80cm×高さ15cmが必要です。
かぼちゃはツルを伸ばして葉を多く繁らせますので、広い区域を確保してください。
ワラを敷く
かぼちゃはツルが伸びる方向に根を伸ばします。
株元からツルの伸びる方向にワラを敷くと地表の水分が適当に保たれますし、日光をさえぎるので雑草の抑制にも役立ちますので、ぜひやってほしい一手間です。
ワラの量は地表が見えないくらいが適量です。
浅く敷くと、かぼちゃの巻きひげ(茎や根の一部が蔓状に変形したもの)がワラに絡まって風雨に強くなる反面、根がワラを土と勘違いして、ワラと地表の間に伸びてしまい深い根を張らないまま成長します。
浅い根は生理障害や病害虫の発生原因になるので、地表が見えない程度の量をしっかりと敷いておくとよいでしょう。
(仮にワラが入手できなくても、栽培は可能です)
苗の植え付け【5月中旬~下旬ごろ】
株の植え付け間隔は90cm以上にします。
鉢土がすっぽり収まる程度の穴を掘り、苗をやさしく植え付けます。
植え付け後は大きな空洞が残ってはマズイので、土と根をくっつけるイメージでタップリと水を与えます。
水やり
かぼちゃの水やりは降雨のみでOKです。
ただし、敷きワラやマルチシートをしていない場合は、連日の日照りによる水切れに注意して観察してください。
株元に近い葉がしおれてきたら、たっぷりの水を与えるようにしましょう。
追肥【6月上旬~中旬】
かぼちゃ栽培では、基本的に追肥をおこないません。
どうしても心配な場合や、明らかに生育が悪い場合は小ヅルが50cm以上伸びた時点で、ツルの先あたりに、化成肥料(8-8-8)を軽く一握り程度、鋤き込んでください。
※心配だからと大量に与えてはいけません。ツルばかり成長してしまい花が着きにくい悪い状態におちいってしまいます。
親ヅルを摘芯(てきしん)して小ヅルを伸ばす【6月上旬~中旬】
かぼちゃは葉で行われる光合成によって、美味しさが決まります。
光合成をしっかり行わせるためには、葉と葉が重ならないようにすることがとても重要です。
本葉が7~8枚に展開したら親ヅルを剪定(切る)して小ヅルの成長を促します。
これを親ヅルの摘芯と呼びます。
発生した子ヅルは、出来れば同じ方向に誘引、整列して陽の当りをよくしましょう。
一番花を摘花(てきか)する【6月中旬~下旬】
意図的に花を摘み取る作業を摘花といいます。
雌花の一番花は摘み取ってください。
栽培中の株で最も早く着いた雌花が実をならすと変形したり、病気にかかったりする原因になります。
とてもかわいそうな行為ですが、良質なかぼちゃを収穫するには必要な作業です。
雄花は摘花の必要はありません。
雌花と雄花の違いは花のガク元がプックリしているかどうかを見ると簡単に区別できます。
授粉と受粉日の記録【6月上旬~7月中旬】
かぼちゃは授粉しないと果実が肥大しません。
ミツバチや風が花粉を運ぶこともあり得ますが、とても確率の低い授粉ですので必ず人の手によって受粉をおこないます。
晴天の早朝(午前9時くらいまで)に雄花をちぎって、雄しべを雌花の柱頭にこすり付けてください。
失敗すると自然落果してしまいますので、確実に受粉することが大切です。
受粉日を書いたラベルや標識を付けておくと、後々の収穫日の判断材料になります。
授粉しすぎた場合は摘果(てきか)を行う【6月中旬~7月下旬】
受粉は1つの孫ヅルに2個までとしてください。
3個以上実を付けることもできますが、3個目以降の果実は味が薄く水っぽいだけの美味しくないかぼちゃに育ちます。
欲張らず確実な収穫を目指しましょう。
1本のツルに何個着果しているか確認して3個目以降の果実を摘み取ってください。
この作業を摘果と言います。できるだけ早い段階での摘果をおススメします。
株元から5枚以下には着果させない【6月中旬~7月下旬】
着果した先の葉数が多いと、葉でつくられた炭水化物がたくさん実に流れ込むので甘いかぼちゃになります。
逆に、葉数が少ないと水っぽいかぼちゃに育ってしまいます。
株元に近い果実を本生り(もとなり)、ツルの先端の果実を末成り(うらなり)と呼び、本生りは甘く、末成りは甘くない傾向があります。
株元(葉が5枚以下)に着果させてしまうと、ツルの伸びが悪くなるので、仮に二番花以降の果実でも、株元の果実は早い段階で摘果しておきましょう。
収穫のタイミング【8月中旬~下旬以降】
授粉から約50日後が目安となります。
授粉日の記録を元に、計算して収穫します。
指先の爪をかぼちゃの皮に押し当てて、皮に爪が喰い込まないくらい固くなっていたら収穫が可能です。
簡単に爪が刺さって、跡が残るようならやや早いと判断します。
単純に50日後の収穫でもOKですが、一つ確認しておくと良いでしょう。
かぼちゃは空中栽培も可能?
どうしても栽培面積を確保できない場合や、小玉のかぼちゃを栽培する場合なら空中栽培も可能です。
空中栽培のメリット
風通しと日当たりが良いので、病害虫の被害に遭いにくいメリットがあります。
また、地這い栽培なら水平方向にツルを伸ばしますが、空中栽培なら垂直方向や斜め方向にツルが伸びるので、栽培面積を小さく抑えるメリットもあります。
支柱とネット
ツルが旺盛にのびるかぼちゃですし、果実もそれなりの重量がありますので、とにかく頑丈な支柱が必要不可欠です。
種苗店で相談するなどして、しっかりとした支柱を入手してください。
支柱にはネット(10cm前後の網目)を結束して、よりツルが巻き付きやすい環境を整えておきます。
さらに、重い果実をつるすための果実ネットが販売されていますので、支柱やかぼちゃの株が倒壊しないためにも、大玉種や中玉種の空中栽培に挑戦する場合は、入手しておいてください。
ミニカボチャ品種
一般的な品種のかぼちゃは1玉が1kgを超えますが、「ほっこり姫」や「はやと」(日本種のかぼちゃ)なら600g前後の重量で収穫できますので、支柱が倒壊する心配も軽減されます。
またミニ品種は一般的な品種と異なり、1本のツルに5個以上の着果が可能になりますので、一個の大きさは小さいものの「数多く収穫できたっ!」という満足感は大きいかもしれません。
かぼちゃの病気・害虫対策
病気
うどんこ病
葉の表面に、薄く白い粉状のカビが発生します。
風にカビの胞子が運ばれることでまん延します。
発見しやすいので、見つけ次第摘み取るか、より広がる場合は薬剤散布で抑え込みます。
モザイク病
葉に濃淡のモザイク模様が現れ、ひどくなると葉は縮れて奇形化します。
媒介するのはアブラムシですが、肥料(特に窒素成分)を過剰に与えると、アブラムシが付きやすくなります。
かぼちゃ栽培では肥料を抑え気味に施すことが、病害虫を抑制する意味でも重要になります。
害虫(ウリハムシ)
ウリハムシは植え付け後や、ツル先の若い葉に着きやすい害虫で、放っておくと葉が穴だらけに。
葉が浴びる日光量が激減してしまうので、美味しいかぼちゃに育ちにくい株になってしまいます。
手で捕獲するか、大量に付いた場合は殺虫剤で処分します。
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まとめ
かぼちゃ栽培はとにかく日光の確保です。
光合成を十分に行わせて、大量の炭水化物を実に集めてもらいましょう。
上質なビタミンやミネラルをタップリ含んだかぼちゃは、まさにお日様の恵みです。
栽培期間が長いので、夏休み中の子どもたちと栽培に取り組み、植物と太陽の関係や冬至にかぼちゃを頂いて厳しい冬に備えるなど、教育・食育の大切さを考えるきっかけにする場合にも、かぼちゃはうってつけです。
手間はかかりますが、特別難しい作物ではありませんので、ぜひかぼちゃ栽培に挑戦してみてください。
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