今回取り上げるのは「森のバター」とも呼ばれる、濃厚でねっとりした食感ながら、高い栄養価も併せ持つアボカド。
収穫までは長い時間がかかりますが、広く大きな葉は見た目にもスタイリッシュで、観葉植物としての価値もあります。
日本で代表的な「ハス」という品種のアボカドなら、あなたのご自宅やオフィスで栽培を楽しむことができます。
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アボカド栽培の特徴
日本での栽培は?
あなたがスーパーマーケットで目にするアボカドのほとんどは、メキシコ産の「ハス」という品種のアボカドです。
ハスであれば日本の気候でも栽培が可能です。
耐寒温度は-5℃、生育適温は25~30℃ですので、関東より西の地域なら問題ありません。
収穫まで何年?
種からの栽培に成功すると、4~6年目ごろに収穫となります。
アボカドの木がしっかりした実を結び、収穫に至るまでは、長い時間を要し、手間もかかります。
アボカドの木は、本来は高さが20mにもなる常緑高木ですが、鉢植えでは1〜2mになります。葉は褐色から緑に育ち、花は大きさ1cmほどの小さな黄色い花を5〜6月頃にたくさんつけます。
受粉に失敗することもありますし、もともと受粉に成功しても結実しにくいのが、アボカドの特性です。
葉が大きく室内栽培が可能なので観葉植物として楽しみながら、じっくり腰を据えてアボカドと付き合ってみましょう。
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【アボカドの育て方】 種のまき方から発芽まで
鉢植えで発芽
種の準備
種の入手はスーパーマーケットでできます。
意外に思われるかもしれませんが、アボカドを調理する時に目にする、果肉に包まれたピンポン玉のようなあの種を使います。
まずは果肉を十分に洗い落としましょう。
食べるのにちょうどよい頃の果肉には「発芽を抑制する成分」が含まれています。
できれば種の表面にある薄皮も取り除いてください。
植え付け
土は赤玉土や真砂土(まさど)などを使いますが、お持ちでない場合は種苗店・ホームセンターで購入してください。
発芽を促すときには、水だけで良いので肥料を準備する必要はありません。
種の尖った方を上にして、半分が土に埋まるように置きます。この状態で40~50日間、土が乾かないように水を与えます。
発芽の適温は22℃です。
アボカドを栽培する場合は、食べる前も、植え付ける前も、アボカドを冷蔵庫に入れないでください。冷やされると種が休眠に入って、発芽しないことがあります。
地域差がありますが、5月以降の「気温が20℃を越える時期」に種を植え付けましょう。
水につけて(水耕栽培)発芽
アボカドの種は水につけておいても発芽します。
発芽まで
種についた果肉を十分に水洗いする点と、尖った方が上になるよう置く点は、鉢植えの場合と同じです。
水耕栽培をおこなう容器は、いらなくなったコップでも、手ごろなペットボトルでも、種の直径より2~3cm大きく、水をためておくことができるものなら何でも結構です。
種は常時、下から3分の1~半分の位置まで水に浸かるよう設置します。
種に爪楊枝を刺して容器に乗せても大丈夫ですし、種の下にペットボトルのフタを逆さまに沈めて、支えにしても大丈夫です。
30~40日で発芽します。水耕栽培の場合も、時期はやはり5月以降が適しているでしょう。
50日以上経って、根が十分に張り出していたら鉢に植え替えます。
植え替え
鉢植えの材質は問いません。素焼きでもプラスチックでもお好みのものをどうぞ。
土は園芸用土や、観賞植物用土でOKです。
成長が進むと葉が茂り、鉢の直径よりもはみ出すようになれば、鉢をより大きなものに替えます。
この作業を鉢増し(はちまし)といいます。
根を痛めないよう慎重に樹を取り出し、土もできるだけ落とさないようにして、新しい・大きい鉢に植え替えます。
アボカド栽培で用いる鉢は12号(※)程度が最大です。
12号の鉢でも鉢増しが必要なほど成長した樹は地植え(じうえ=鉢ではなく庭やほ場に定植すること)を行います。
1号=約直径3cmですので、12号の鉢は約36cmの直径がある鉢となります。
鉢植えから地植えへの植え替え
次の場合には、鉢植えから地植えへ変えます。
- 12号の鉢でも鉢増しが必要なほど成長した
- 鉢の底穴から根が飛び出している
- 土に、なかなか水がしみ込んでいかない(根が張りすぎていると起きる現象)
などの場合は、地植えに転換してあげましょう。
場所は日当たりが良ければ、さほど神経質になることはありません。
土の種類もさほど気にしなくて大丈夫です。
アボカドは酸性の土壌を好みますが、日本の土は基本的に酸性に寄っているので酸性度の調整も必要ありません。
地植えに切り替えるのは、5~6月が生育温度に近い時期で、アボカドの木に負担が少なくて良いと考えます。
「剪定」や「摘芯」ってどうやるの?
上方向に伸びる枝を切り落として、水平方向か斜め上方向に伸びようとする枝を残すように、アボカドの木を刈り込みます(剪定)。
また地上40cmの高さで、摘芯(先端の芽を摘み取る)をします。
幹の太さの割に、木に高さが出る植生があるので、必ず芯を摘んで高さのセーブをしましょう。
幹が十分に太っていない場合は、支柱を立てておくと倒壊の心配がやわらぎます。
葉が多い方がいいのでは?と疑問を持たれるかもしれませんが、過剰に茂ると風通しを悪くし病害虫発生の原因になるので、剪定・摘芯は行いましょう。
水やり・肥料について
水やり
アボカドは乾燥に弱い植物です。
地植え直後は、神経質なほど土の乾燥に注意してください。土の表面が乾いたら、必ず水を与えます。
根が付いてしまうと、さほど水やりを気にすることはありません。
ただし鉢植えのままや、室内で栽培する、観賞用として育てている場合でも、日当たりがよくて気温が高い場所を選び、空気が乾燥している場合は注意して水を与えてください。
肥料
春から秋にかけてアボカドは大きく成長し、その分、肥料を求めています。
窒素-リン酸-カリウムの三要素が等量か、リン酸がやや多い肥料(8-8-8や8-10-8など)を施します。
量は、樹1本あたりペットボトルのフタに1杯程度で結構です。
また、花をたくさん着けた頃も肥料を多く必要としますが、この場合は即効性のある液体肥料で対応しましょう。
肥料のパッケージなどにある3つの数字の表記は、この三要素の含む量と割合をしめしています。
例えば、8-8-8の化成肥料100gには、窒素8g-リン酸8g-カリウム8gを含む と読み取ります。
「冬を越す(越冬)」には?
ハス種は、-5℃までの耐寒性を持っていますが、成長は極端に悪くなり、最悪のケースでは枯れて失敗します。
防寒ネット、栽培用不織布(ふしょくふ)などを巻いて、葉が枯れるのを防いであげましょう。
鉢植えの場合も屋外なら同様に防寒対策をしても結構ですが、やや手間がかかるので、日当たりのよい室内へ移動して寒さをしのぎます。
なお目安ですが、一日の最低温度が5℃を下回るようなら防寒対策をします。
6℃以上の気温がキープされる状態なら、寒さの心配はありません。
アボカドの花と結実、収穫の時期について
結実には花の受粉が必要で、風や虫が受粉する場合もありますが、とても不確実な受粉なので人工授粉を行いましょう。
ハス品種のアボカドだと、まず雌花が開いて、その後雄花が開化します。
この雄花の中に花粉をたたえた葯(やく)がありますので、摘み取って冷蔵庫で保存しておきます。
翌日、再び雌花が開花したら、雄花から採取した葯を雌しべに付着させます。目をこらして雌しべに花粉が付着しているのを確認してください。
気温の条件によっては、稀に雌花と雄花の開花が重なることもあります。この場合は、雄花から摘み取った葯を、そのまま雌しべに付着させて構いません。
ハス品種なら12月~2月ごろ結実します。
●アボカドの栄養や食べごろ、食べ方の関連記事はこちらへ
アボカドの病気や害虫
病気:炭そ病(たんそびょう)
剪定を行わず枝葉が混み合うと、風通しが悪くなり発病することがあります。
葉に黒色の斑点が現れます。
見つけ次第取り除いて、病気のついた葉は処分します。
まん延が気になるようであれば、種苗店などで防除薬をお求めになり、「屋外で」散布してください。
害虫:カイガラムシ、ハダニ
剪定があまいと枝が混みあい、枝葉にカイガラムシやハダニが発生することがあります。
剪定による風通しの確保が、被害を未然に防ぐ第一条件です。
もしカイガラムシやハダニが発生したときは、水責めのあと薬剤散布、が効果的です。
鉢植えの場合は、一度屋外に出します。
カイガラムシやハダニは葉の裏に棲みついていますので、低い位置から葉に水をぶつけるようにして、害虫をかけ流してしまいます。
これである程度の害虫が吹き飛んでいると思いますが、完全ではありません。
翌日、薬剤を散布して徹底的にやっつけておきましょう。
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まとめ
実を結ぶまでには、4年以上という時間は必要ですが、やることと言えば、年に2~3回の肥料と、乾燥した時の水、成長しすぎた時の鉢増しもしくは地植えへの転換です。
観葉植物として十分に価値のあるものですし、何よりご自分で育てたアボカドは、ひと味もふた味も美味しいことでしょう。
ポストハーベストの心配もない、安心・安全なアボカドを、達成感をかみしめながら召し上がってみてください。
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